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スペイン漫遊記

各位
さて、私は、60歳で勤めていた、製薬会社を退社し、女房とともに、スペインに行くことになった。もちろん、私はスペイン語はもちろんスペインなんかまったくわからなかったのである。そんな私が、スペインなんて行ってどうするのかも考えなかったのである。どうだ、私の能天気ぶりはすごいだろう。片言の英語が喋れれば何とかなると思ったのだ。行く先はバルセロナ、ここは日本のヨーロッパ交易所の中心地で、なんと日本人は3,000人もいたのである。日本料理屋、すし屋もあるので食事には困らなかった。大きな日本料理屋があり、よく足を延ばしたのだが、しばらくすると、板前さんの前の席には来ないでくれといわれた。スペイン人に板さんが日本食を作るところを見せ、要は、日本食がどのようにして作るのか、スペイン人に見せたかったようである。その席以外は4、5人座れるテーブル席なのである。そんな席で一人で食事しても仕方がないので、すぐそばのすし屋に行くようになった。この店も同じ経営者だが、板さんの前にはたくさんの個人席があるため気兼ねせずに一人で座れ、そのうえ、板さんと日本語でしゃべれるのである。そのころの日本円はユーロに比べるとかなり価値があったため、高い寿司などを食べるスペイン人はあまりいなかったのである。ある時、見るからに高級な服を着た40くらいの女性が来店した。どうも、寿司を食べるのは初めてらしい。われわれ日本人が寿司を手でつまみ、みそ汁も手でつかんで飲んでいるのを見て、それが寿司、みそ汁の食べ方だと思ったらしい。手で寿司をつまんだが、手に力を入れすぎて割れてしまった。次に味噌汁を飲もうとしたが、取っ手がないため両手でつかみ飲もうとしたが、これも飲めずにこぼしてしまった。そこにいた日本人はあっけにとられ、この場面を見ていた。しかし、すごいのは、少しも慌てずにナイフ、フォークなどを頼み自分流に食べ始め、さすがに、日本人にじろじろ見られていることに気づき、すぐに出てしまった。板さんに”あんなのがたくさんくるのか”と尋ねたところ”あんなのはめづらしい”とのことであった。いや、いや、さすがにこの地と日本の文化、文明は違うと初めて気づいた次第である。このことがあってから、私のスペイン漫遊旅行は、ただ、物見遊山するだけでなく、日本とこの地の違い、特に、文化、文明、歴史などについて、見て、触って、学ぼうと思うようになったのである。
    この続きは次回。    阿部 弘

by hiabe | 2020-09-30 09:56 | スペイン回想